シンガポールが世界の人工知能(AI)のハブとして急成長している理由
こんにちは! リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。
人工知能 (AI)の研究、イノベーション、ガバナンスにおいて世界をリードする存在となったシンガポール。
政府主導での取り組み、強固なAIエコシステム、戦略的パートナーシップの締結などによる効果で、多くのハイテク企業をこの地に引きつけています。
当ブログでは、シンガポールが世界的なAIのハブとして台頭した理由と、それがこの地域の企業や労働者にとって何を意味するのかを、紐解いていきます。
※当記事は2024年11月時点の執筆です
【目次】
1. 政府が掲げる戦略と大規模投資
2. シンガポールでのAI主要企業のプレゼンス
3. 次世代AI人材の育成
4. コラボレーションとイノベーションを生み出すエコシステム
5. AI開発の加速 ー 企業や従業員へのインパクトは
6. 最後に
1. 政府が掲げる戦略と大規模投資
シンガポールは2019年に初めてAIに関する国家戦略を発表。
以来、追加や微調整を加えながら今日に至っています。
最近のものでは、昨月(2024年10月)のデジタル国家施策「Smart Nation2.0」が発表されたことが記憶に新しいかと思います。
2023年に発表された国家AI戦略2.0 (NAIS 2.0)では、今後5年間で10億シンガポールドル (約1150億円)の投資を含むロードマップの概要を示しました。
先端技術を取り込み、シンガポールがAIのハブ地としてますます地盤を固めることを目的としています。
加えて、2029年までにAI人材を現在の3倍である約1万5000人規模に増やすことも目指しています。
政府は、AI開発が進むにつれて生じる課題にも早期から予めリーチしてきました。
倫理的かつ透明性の高い基準を遵守しながらのAI開発を謳っており、AIガバナンス・フレームワークなどの政策を導入しています。
これによって責任あるAIの利用を奨励し、AIシステムへの信頼感の醸成を促進しています。
国家戦略発表当時から、こうした倫理の側面からも国際会議の場でリスクや解決策などを提唱してきたことによってAIガバナンスの世界的オピニオンリーダーの地位を確保しており、その結果、世界のAI企業にとって魅力的な土地となっているのです。
2. シンガポールでの大手AI企業のプレゼンス
いち早くAI国家戦略を打ち出し推進してきたこともあり、シンガポールでも大手AI企業の存在感が高まりつつあります。
ChatGPTを運営するOpenAIは、当エリアでのビジネス拡大のためにシンガポールに新オフィスを設立する計画を発表しました。
これはAI技術とイノベーションにおけるシンガポールのリーダーとしてのポジションが認められた証と言えます。
またこの背景には、国家プログラム「AIシンガポール」との提携、協力関係といった取り組みが活きています。
OpenAIに加え、グーグル、マイクロソフト、アマゾンなどの大手テック企業もシンガポールで大規模なAI事業を立ち上げています。
グーグルは「AI Trailblazers」イニシアチブを通じて積極的に地元ローカル企業を巻き込んでおり、43を超える企業がグーグルのAIツールを使ってAIソリューションを開発していると言われています。
一方、マイクロソフトはシンガポール政府と協力し、地元の中小企業にCopilotのようなAIツールへのアクセスを補助金付きで提供し、デジタル・トランスフォーメーションの加速を支援しています。
3. 次世代AI人材の育成
シンガポールがAIのハブとして台頭した要因のひとつとして忘れてはならないのは、人材育成にも力を入れてきたことです。
先述した「AIシンガポール」は2017年に発足した、地場でのAI人材の育成、研究の実施、産業界によるAIの導入支援を目的とした、シンガポール国立大学主催の国家プログラムです。
「AIアプレンティスシップ・プログラム (AIAP)」といった育成の取り組みによって、若い人材に実践的なAIトレーニングを提供し、AIアプリケーションを開発するスキルを身に付けさせてきました。
国際的なパートナーシップの締結も、当地域における人材育成にひと役買っています。
エヌビディア (NVIDIA)は最近シンガポール工科大学と提携して新しいAIセンターを立ち上げ、学生にAIアプリケーション開発の実地体験を提供しています。
このような取り組みによりAIに精通した若い人材が継続的に生み出され、AI分野の人材ハブとしてのシンガポールの地位がより強固となる仕組み作りができているのです。
4. コラボレーションとイノベーションを生み出すエコシステム
人工知能の応用において、異なる要素が相互に関連・連携している状態を指すAIエコシステム。
シンガポールのAIエコシステムは、官民一体モデルに支えられている点がユニークな特徴と言えます。
「Tech Week Singapore」「Singapore Week of Innovation and Technology (SWITCH)」「Asia Tech x Singapore」などのテックビジネスイベントは、世界のAIコミュニティが一堂に会し、最新トレンドやイノベーションについて議論する場となっています。
これらのイベントを通じてナレッジ共有やコラボレーションのためのプラットフォームを提供し、AIソリューションの先端開発を促進しているのです。
ビジネス上でのコラボレーションを重視するシンガポールは、これまで数多くの産学連携を成功に導いてきました。
例えば「100 Experimentsプログラム」は、企業がAI研究者と実地プロジェクトで協力することを可能にし、ヘルスケアから金融まで幅広い業界におけるAI導入の加速を支援しています。
5. AI開発の加速 ー 企業や従業員へのインパクトは
シンガポールが世界的なAIのハブとしての地位を固めるにつれ、企業や労働者層への影響も今後より大きくなっていくことが指摘されています。
生じる影響には、どのようなものがあるのでしょうか。
・AIスキルの需要拡大
AIビジネス拡大に伴い、AI関連スキルの需要が必然的に高まります。機械学習、自然言語処理、データ分析、AI倫理などの専門知識が含まれるこれらスキルの需要増は、企業が競争力を維持するために従業員のスキルアップに投資する必要があることも意味しています。2029年までにAI人材を3倍に増やすという政府の動きは、この需要に応えるための施策です
・雇用シーンにおける置き換えと転換
AIの導入は新たな雇用を生み出す一方で、雇用の転換をもたらす可能性もあります。自動化が可能な職務は、AIを活用したソリューションに取って代わられる可能性があります。逆の見方をすれば、AI開発や管理によって、より価値の高い役割への再教育や移行の機会をもたらすとも言えます
・中小企業と新興企業が受ける恩恵
中小企業は、政府のAI構想や大手テック企業との提携などからの恩恵に預かることが可能です。補助金付きでAIツールやソリューションにアクセスすることで、業務の合理化、生産性の向上、技術革新が可能になります。またAI技術に特化した新興企業が当地でビジネスを成長させることによって、大手企業と提携・協業する可能性がある、という点がシンガポールの優位性です
・ビジネス競争力維持とイノベーションの創出
AIを活用する企業は、業務を最適化し、顧客体験価値を向上させ、データ主導での意思決定を可能にすることで、競争力を獲得することができます。 また、AIを活用した製品やサービスの開発を通じて新たな収益源を開拓することもできます。シンガポール発の企業が当地でイノベーションの最前線に立つことを、シンガポール政府も期待しています
最後に
シンガポールが世界の中でも人工知能のハブとして台頭したのは、
・政府による戦略的な投資
・強力なガバナンスの枠組みの制定
・AI人材の育成
・協力的なエコシステムの創出
といった先進的、しかし地道な戦略が実を結んだ結果です。
企業にとっては、AI技術をビジネスに取り入れることが競争力を維持するために極めて重要になる一方で、働く人々にとってはAI主導の経済システムで生き残るために新たなスキルの習得にも注力しなければならないという一面もあります。
シンガポール政府が長年打ち出しているリスキリングの政策が、それを支えているとも言えますね。
こうした長年の取り組みの数々が互いに奏功し合い、シンガポールの更なる発展を築いていくことと思われます。
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