2025年シンガポールの就労ビザ制度改定 知っておきたい変更ポイント
こんにちは。
リーラコーエンシンガポール マーケティング担当の野上です。
シンガポール政府はこれまで当地で就労するための外国人の就労ビザの引き締めを行ってきました。
最も取得のハードルが高い高度専門職や経理幹部向けの就労ビザと言われる「EP(Employment Pass)」取得時の最低給与額は2020年5月と同年9月に改定されたのち、今年1月からは最も若い年齢層で5,600シンガポールドル (SGD)に設定されています。
これに加え、先日、シンガポール人材開発省(以降MOM)は、今年2025年7月以降順次適用となるシンガポールの就労ビザのSパス、ワーク・パーミット(WP) の就労ビザ要件の改定を発表しました。
改めて外国人の高度人材の受け入れを強化しつつ、シンガポール人の雇用を保護する方針です。
今回は、今年順次適用される就労ビザ制度の主な変更点について、分かりやすくお届けいたします。
【目次】
1. Sパスの給与要件引き上げ
2. ワーク・パーミット(WP)制度の緩和
3. 雇用トレンド:過去10年間の変化
4. 企業への影響と今後の展望
5. 最後に
1. Sパスの給与要件引き上げ

MOMは、今年2025年9月1日より中技能熟練労働者向けの就労ビザ「Sパス」を取得時の最低月額給与を150SGDずつ引き上げることを発表しました。
最新給与額は以下の通りです。
業界 | 現在の最低月額給与(SGD) | 2025年9月1日から(SGD) |
一般業界 | 3,150 | 3,300 |
金融サービス | 3,650 | 3,800 |
なお、上記は最も低い年齢の場合の金額となり、給与は年齢に応じて引き上げられます。
例えば40代半ばの場合は以下の水準です。
一般業界:最大 S$4,800
金融サービス:最大 S$5,650
今回のSパスの給与要件の引き上げは2022年、2023年の改定に続き3回目となります。
企業への影響は最小限か
弊社のオペレーション・マネージャーを務める須長は、今回のニュースに際しNNA ASIA様より取材いただいた際「すでに多くの日系企業が、今回の基準を上回る給与水準で採用しているため、今回のSパスの給与引き上げが企業に与える影響は限定的であり、大きな影響はないだろう」とコメントしています。
(NNA ASIA様の記事全文はこちら)
2. ワーク・パーミット(WP)制度の緩和
一方で、単純労働者向け(日本国籍をお持ちの方については一部の例外を除いてDependant’s Passをお持ちの方のみ申請が可能)な就労ビザである「ワーク・パーミット(通称WP)」制度は緩和が予定されています。
今年2025年7月1日より、以下の規制が変更となります。
・雇用期間の上限を撤廃(現在の14〜26年の制限を廃止)
・就労可能年齢の上限を60歳から63歳に引き上げ
・製造・サービス業では現在マレーシア、中国本土、香港、マカオ、台湾、韓国の6カ国・地域の出身者のみ容認されているところ、NTS(ノントラディショナル・ソース:インド、スリランカ、タイ、バングラデシュ、ミャンマー、フィリピンの6カ国)の国籍の労働者が就ける職種を拡大。9月1日からはブータン、カンボジア、ラオスも追加
さらに、9月1日より新たに申請者の出身国・地域に関する雇用要件を大型車両ドライバー、製造業オペレーター、レストランのキッチンアシスタントにも広げる措置を行うことが発表されました。
引き続き、新規労働力供給国・地域出身者のビザの新規取得時には2,000SGDの最低支給額を遵守するものとし、企業の全従業員に対する外国人労働者率上限(DRC)を8%に留めるという条件があります。
3. 雇用トレンド:過去10年間の変化
MOMの最新の統計によると、過去10年間で外国人労働者とシンガポール人の雇用数の推移は以下のように変化しています。
業界 | EP/S Pass増加数 | シンガポール人PMET(専門職・管理職・技術職)の増加数 |
金融・保険・ |
+18,000 | 172,000 |
【全体】
・EP & Sパス保持者の増加:+38,000人
・シンガポール人のPMET職の増加:+382,000人(外国人の約10倍)
タン・シーレン人材開発相は、今回の変更に際し「シンガポール人にとって利益のあるグローバルビジネスを支えるために必要な人材を奪うことに繋がってしまうため、私たちは『シンガポール人だけ』という考え方は持つべきではない」とコメントしており、外国人の専門性やスキルを活用しつつ、シンガポール人の雇用、またはスキル開発を優先的に進めていく方針を示しています。
4. 企業への影響と今後の展望
今回の変更により、企業にはどのような影響が出てくるのでしょうか。
製造業、食品サービス、物流業界等においては、より多様で経験豊富な労働力を確保しやすくなると言うメリットが考えられます。
弊社の須長も、先出のNNA ASIA様のインタビューにおいて「特に今回のSパス給与引き上げについては、負担になることは考えにくい。WPの規制緩和については製造業や飲食業などの人材不足が深刻な業界にとっては大きなメリットになると見ている」とコメントしています。
5.最後に
今回は、先日発表された今年以降のSパス・WP取得要件の変更点について詳しくお届けしました。
今年も変化が予想されているシンガポールの人材市場。
対応策や人材確保の戦略は早めに立てておくことが重要 です。
最新の人材動向や採用戦略についてのご相談は、ぜひリーラコーエンシンガポールまでお気軽にお問い合わせくださいませ。
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