シンガポールナショナルデー演説の要点をピックアップ
こんにちは。
リーラコーエン シンガポールマーケティング担当の野上です。
8月9日の盛大なナショナルデーに加え、先週末はリー・シェンロン首相によるナショナルデー演説(NDR: National Day Rally)がありました。
会場での有観客での演説は、2019年以降3年ぶりでした。
新型コロナウイルスのパンデミックとのこれまでの戦いや今後について、昨今の厳しい世界情勢による経済への影響、シンガポールの未来や法改正などの多岐にわたる内容が英語・マレー語・中国語で伝えられました。
内容も濃く、私たちの生活にも影響がある内容が発表されるなど盛りだくさんだった本演説。
今回は、いくつかの要点を抜粋してお届けいたします。
【目次】
1.室内でのマスク着用義務がなくなることに
2.世界トップレベルの人材を集めるスキーム導入
3.進められる都市開発とインフラ整備
4.最後に
1.室内でのマスク着用義務がなくなることに
今回の演説の前半に発表され、大きな話題となったのが、マスクの着用義務についてです。
これまでは屋外でのみマスクを取ることができましたが、リー首相は、近い将来ショッピングモールなどの室内でもマスクの着用義務を無くすことを発表しました。
背景に「シンガポールの国内の感染状況が安定してきており、これ以上国民がマスクによるストレスや疲労を感じないようにするため」とされ、2年半ぶりに室内でもマスクを取ることができるというリー首相の言葉で、演説会場も大きな拍手に包まれていました。
また、学校や幼稚園の教室内でも「子どもたちは周囲の表情を見て、色々な感情を学び取る必要がある」とし、マスクなしで登校が可能になりました。
一方で、不特定多数の大勢と一定時間狭い空間にいる必要のある公共交通機関と、病院やクリニックの中では引き続きマスクの着用義務が残ることになります。
適用日は演説では発表されなかったものの、近い将来発表があるようです。
※追って2022年8月29日(月)から適用と発表されました
リー首相は、「これからもっと強く、新型コロナウイルスよりも危険なウイルスのパンデミックが起こる日が来るかもしれない。
しかしながら、私たちが今回学んだ最も大きな教訓である一人ひとりの行動の社会的責任と信頼を常に意識すれば、次に来るパンデミックにも立ち向かえるだろう」と話しました。
2.世界トップレベルの人材を集めるスキーム導入
リー首相は演説で「一人ひとりの才能が国の成功を左右する時代になった今、シンガポールは世界トップクラスの人材プールを構築する必要がある」とし、海外のトップレベルの人材を集める新しいスキームを導入することを明らかにしました。
近日中に人材省(MOM)と通商産業省(MTI)より詳細の発表があるそうです。
外国人人材の全体数はコントロールしながらも、トップレベルの人材を誘致する努力は怠らないとしました。
演説では実際にバイオメディカル部門の成長を例に挙げ、1990年代に渡星した外国人専門家が、ローカル人材の育成に注力しながらビジネスを広げ、今やバイオメディカル部門は約25,000人の雇用と国のGDPの5分の1を支える大きな柱になったことを説明しました。
特に最近では新型コロナウイルスのワクチンや検査キットに代表されるドイツのバイオンテック(BioNTech)社やサノフィ社がシンガポールで新プロジェクトを立ち上げるなど精力的にビジネスを広げています。
「海外からの投資の誘致と維持に注力するのと同じように、最高の人材の誘致と維持に注力する必要がある」とリー首相は演説しました。
スキームの詳細が分かり次第、改めて本ブログでもご紹介したいと思います。
3.進められる都市開発とインフラ整備
リー首相はパンデミックにより止まっていたインフラ整備と都市開発を一気に進めていく姿勢を示しました。
まず、これまで新型コロナウイルスの影響で2年間休止されていたチャンギ空港のターミナル5の建設を再開することが発表されました。
計画によると、ターミナル5はこれまでのターミナル1から4を合わせた面積と同等になる予定で、年間5千万人もの利用客を見込んでいるそうです。
リー首相によると、このターミナルには最新無人走行車の導入、環境にも配慮した設計が検討されているそう。
2030年前後に完成予定となり、完成に合わせて新ターミナルに隣接する区域は「チャンギイースト・アーバン地区」として、新しくオフィスやショッピングモールなどの都市開発を進められます。
なお、同時期に合わせて現在のパヤレバ空港もおよそ15万世帯が住める新しい街として生まれ変わることになりました。
現在の空港はチャンギに集約されます。
また、昨年末にオープンしたトゥアス港の開発工事もさらに進められることが発表されました。
現在タンジョンパガー、ケッペル、ブラニ島、パシールパンジャンと4カ所ある港は2030年代に全てトゥアスに集約されます。
工事は4フェーズに分けて行われており、残りの3フェーズについてはおよそ20年の長い期間をかけて進められるようです。
リー首相は、工事の完成時には、トゥアス港は世界で最も大きな自動化コンテナ港として稼働すると説明しました。
4.最後に
今回はリー首相によるナショナルデー演説の要点をお届けしました。
ご紹介した内容のほかにも、昨今の経済状況への不安視、およびインフレによる国民へのサポートの検討などが発表されました。
また、アメリカと中国間の緊張、ロシアのウクライナ侵攻により悪化する国際情勢にも触れながら、シンガポールの国防についても力強いメッセージを残しました。
全体を通して、新型コロナウイルスのパンデミックをエンデミックと捉えながら、さらなるシンガポール国民の団結と国としての前進、世界との繋がりを意識した強いメッセージを感じられる演説だったかと思います。
また、演説の最後には自身の後継者についても触れ、次期首相の有力候補として現財務相のローレンス・ウォン氏の名前を挙げました。
これからのシンガポールの明るい未来と安全な国政を、在星日本人としても願わずにはいられないですね。
本情報が皆様の参考になれば幸いです。
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