国際学力調査で3回連続1位の快挙!シンガポールの競争力の源泉
こんにちは! リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。
4年に一度、子どもの理数科目の学習進度を測る「国際数学・理科教育動向調査」2023年版(TIMSS)において、シンガポールが理数科目ともに世界1位を取ったことが先日話題となりました。
シンガポールの教育熱の高さは言わずもがな有名ですが、実際それによって国にどのような恩恵をもたらしているのでしょうか。
また、実際どのような教育方法によって学生の理数レベルを保っているのでしょう。
今回は、当地の教育熱のウラにある背景や、理数教育にどのように力を入れているのかについてお伝えしていきます。
【目次】
1. 国際数学・理科学力調査(TIMSS)2023年版
2. 理数教育レベルの高さで何が変わる?
3. シンガポールで進むSTEM教育
4. シンガポール理数教育、今後の課題
最後に
1. 国際数学・理科学力調査(TIMSS)2023年版
世界の子どもの理数学力を測るTIMSS(ティムズ)は、国際教育到達度評価学会(IEA)によって1964年に始まった、4年に一度実施される国際学力調査です。
1964年から数学が、1970年以降は理科も加わり今日に至ります。
最新の2023年版には計64ヶ国が参加し、シンガポールではプライマリー4年生・セカンダリー2年生 (日本では小学4年生、中学2年生) に相当する学生が算数/数学、理科の学力テストを受け、その到達度を測るものです。
その調査において、シンガポールは小4算数・小4理科、中2数学・中2理科すべての項目において世界1位を獲得しました。
ちなみに日本は小4算数5位・小4理科6位、中2数学4位・中2理科3位を獲得しています。
どのランキングも上位国は日本を含む東アジア(韓国、台湾、香港)が占めており、世界から見ても教育熱の高いエリアであることが伺えます。
シンガポールのこの結果は前回2019年、その前の2015年においても同様で、まさに世界を圧倒していると言えます。
出題の傾向などはこちら日本・文科省のリンクに詳しいのでぜひ参考までにご覧ください。
2. 理数教育レベルの高さで何が変わる?
教育ランキングでの上位獲得がシンガポール国民にとって誇らしいのはもちろんのこと、これが実際、今後のシンガポール経済に恩恵をもたらす礎となります。
STEM教育をご存知でしょうか。
科学Science、技術Technology、工学Engineering、数学Mathematicsの頭文字をとった、いわゆる理数系の総称ですが、STEM教育は今の時代に求められる創造性、問題解決力や自主性を理数系分野において養う21世紀型の教育システムを指します。
日本でもSTEM教育を取り入れる学校が近年増えてきており、耳にする機会も増えています。
シンガポールはこのSTEM教育に非常に力を入れており、この教育によってスキルを培った学生たちが将来、当地の技術、研究、イノベーションを加速させることを期待しています。
近年重要視される気候変動分野、デジタル・トランスフォーメーション、グリーン・テクノロジーや人工知能といった新興産業における成功も、STEM教育の成果が左右すると言われています。
では理数教育の充実が、シンガポール社会にどのように恩恵をもたらすのでしょうか。
企業と働く人々の両面から見ていきます。
【企業への恩恵】
・熟練した人材プールへのアクセス
在シンガポール企業は、高学力且つSTEMに精通した労働者を採用する機会に恵まれます。特に技術、医療、工学の分野において顕著です
・投資の魅力向上
シンガポールの強力な教育システムは、多国籍企業(MNC)の進出先候補としても魅力的です。地域本部や研究開発センターの設立を検討する企業は、常に世界トップクラスの人材を求めているからです
・イノベーション主導の成長
学生が数学・科学的概念を実社会で生じる課題に応用するスキルを身につけることは、企業のイノベーションを推進することに繋がります。これはグローバル市場で競争力を維持するために不可欠な条件です
【働く人々にもたらす恩恵】
・就職機会の向上
STEMスキルを身につけることは、需要の高い分野の職を得ることに繋がります。また、STEMスキルはこの先に興る新産業への移行もスムーズにしてくれるはずです
・国際競争力の担保
強力な分析力と問題解決能力を備えることで、シンガポールで育った人材がグローバルな雇用市場でも評価される立場となり、結果、国内外での機会が広がります
・社会経済的格差の是正
特筆すべきは、シンガポール国内では学力が低めである生徒も、国際平均を上回る成績を収めていることです。これは国としての教育システムの包括性を示していると言えます
3. シンガポールで進むSTEM教育
上に挙げたSTEM教育について、少し掘り下げていきます。
シンガポールでSTEM教育が取り入れられ始めたのが2014年。
シンガポール教育省(MOE)主導のもと、シンガポール科学センター傘下のSTEM incと提携しての出発でした。
リー・シェンロン前首相も2015年のスピーチにおいて、STEM教育についてこう述べています。
「環境に優しい住宅の建設、水路や公園の連結、公共交通網の拡大、ジュロン・イーストとクアラルンプールを結ぶ高速鉄道といった複雑なプロジェクトなど、私たちの生活環境の改善にはすべて、エンジニアリング、テクノロジー、デザインの専門知識とスキルが必要です。小さな国に住む私たちには常に制約がつきまとい、創意工夫と技術によってそれらを克服していかなくてはならないのです」
従来の教育アプローチの延長線でSTEMを捉え理数科目を教える外国とは対照的に、STEM4つの学問分野を1つのまとまった学習モデルに統合し、実社会の事例に焦点を当てている点が、シンガポールSTEM教育の特徴です。
活動は教科書学習を超えて、実験、プロジェクト、コラボレーション活動に重点が置かれています。
STEM教育の一端を担うのが、小学生対象に配布される「SPARKLEキット」。
そのキットの中のひとつ「Let's Light Up」は電気の仕組みを学ぶための教材です。
生徒たちは電球や物を使って遊ぶことで、光がどのように伝わり、影がどのようにできるかを見ることができます。
他にも、カードゲームのような見た目の「Let’s Explore Materials」はさまざまな素材について学ぶための教材で、配られた2枚のカード「物質」「物体」が組み合わせについて思考します。
例えば「セラミック」と「ビーカー」が配られた子どもは、「セラミックで作られたビーカーは使いにくい。セラミックは透明ではないから、液体量が分かりにくい」と発言し、それを基にクラスで意見を出し合うといったように、物質の特性や論理性を育みます。
中学生以上には応用学習プログラム、サイエンス・センター・プログラムといった学習プログラム、シンガポール科学技術フェア、全国ロボットコンテスト、エンジニアリング・イノベーション・チャレンジなどの全国コンテストを通じて、生徒がSTEMへの関心を深め、追求するよう奨励しています。
教室の枠を超えたSTEM学習への理解を促し、生徒の好奇心、創造性、積極性を促すために、実社会で活きる実践的なアプローチを提供しています。
このように、子どもの知的好奇心を刺激する形で年齢に合ったプログラムを、国を挙げて提供しています。
根底にあるのは、従来の教育システムとの対比で「知識<実施」「再現性<創造性」「学び<実践」が重視されていることです。
4. シンガポール理数教育、今後の課題
これだけ見るとシンガポールにおける教育は非常に好調かのように見えます。
ただ、国内では既に学生の数学への関心低下が懸念されており、数学を将来のキャリアの柱として考える学生が減少しているのだとか。
また、職業選択のフェーズでも、先進国の労働市場ではよく見られる現象ながら、シンガポールでは金融や不動産、薬学や法律などの道を選ぶ学生が多いのだそう。
しかし前首相のスピーチにもあるように、国が長期的な成長を維持するためには、STEM教育を実社会において応用したり、進路決定において実用化したりする努力がより一層必要だと叫ばれています。
また、数学のように難解な科目を、より魅力的で親しみやすいものにすべきだとの指摘もあります。
実社会での課題解決にどう数学を活かすか、そういった指導ができる指導者自体を養成するプログラムの開発や、STEM教育の先にある多様なキャリアの機会の紹介などが、今後シンガポールの教育の場では求められています。
最後に
TIMSSでシンガポールが上位にランクインしたことは、当地における教育レベルの高さを如実に物語っています。
弊社に転職のご相談に来てくださる日本人求職者の中には、お子様の教育目的でシンガポールでの就職を希望する方も多くいらっしゃいます。
こうした事実が、実際に世界から人材をシンガポールに惹き寄せる要因となっています。
アジア圏で展開する転職エージェントとして、弊社リーラコーエンはシンガポールで躍進する企業様と、シンガポールでの成長を望む候補者様をお繋ぎできることに誇りを抱いております。
2024年もあと僅かとなってまいりました。
何かと多忙な時期ですが、どうぞお身体をお大事に、良いお年をお迎えください。
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