2023年 シンガポールの 名目賃金上昇率と今後の展望

こんにちは。

リーラコーエン シンガポールマーケティング担当の野上です。

シンガポール人材開発省(以降MOM)は、先日6月25日に2023年の企業の賃金動向に関するレポートをリリースし、2023年の名目賃金の上昇率は前年比5.2%だったことを発表しました。同省は毎年、従業員を10 人以上抱える民間企業を対象にフルタイムおよびパートタイム雇用の従業員の賃金を調査しており、賃金の調査対象には基本給・中央積立基金(CPF)の雇用主拠出分、また年次変動手当(AVC)が含まれます。本調査は、2023年11月8日から今年4月14日の期間で実施され、約5,500社から回答を得たそうです。

今回は、本調査結果についてMOMのレポートを元に詳しくお届けいたします。

【目次】
1.名目賃金と実質賃金は緩やかに上昇
2.収益性と賃金調整について
3.業種別・職階別の賃金上昇率
4.フレックス賃金制度(FWS)の導入状況
5.今後の見通し
6.最後に


1. 名目賃金と実質賃金は緩やかに上昇

同一の企業に1年以上勤続した居住者フルタイム従業員における2023年のCPF拠出金を含む名目賃金は、前年比でプラス5.2%の上昇でした。

コロナ禍の2020年には1.2%まで落ち込み、翌年21年には 3.9%、22 年は 6.5%と少しずつ上昇基調にあった名目賃金の成長率でしたが、今回3年ぶりに前年の上昇率を下回る結果となりました。

MOMは今回の結果について「これは2022年の6.5%増から鈍化したものの、不況ではなかった年に見られる典型的な上昇範囲を上回った」と説明しています。

また、2022年から2023年にかけて緩和したインフレを考慮すると、2023年の実質賃金は0.4%増となり、2022年とほぼ同様の伸びとなりました。


2. 収益性と賃金調整について

2023年には82.1%の企業が収益が黒字だと回答した一方で、前年2022年と比較して収益性が低下したと回答した企業も増加しました。

その結果、従業員の賃金を引き上げた企業の割合は2022年の72.2%から今回2023年は65.6%に減少しています。


なお、実際に賃金を引き下げた企業は6.5%と僅かで、一定に保ったと回答したのは27.9%でした。

逆に賃上げを行った企業については2023年の平均は7.2%で、2022年の7.9%をわずかに下回りました。


3. 業種別・職階別の賃金上昇率

今回の結果では、12業種全てにおいて賃金が前年を上回ったとされました。

その一方で、2022年と比較するとその伸び率は鈍化したことが分かりました。

例外は事務・サポートサービス部門で、2022年の5.2%から2023年の7.1%へと前年の5.2%の伸びを上回りました。

これは低所得者層の給与を段階的に引き上げていく政府施策「累進賃金モデル(PWM)」が要因とされています。

将来的には、本PWMにより飲食サービスや小売業などの産業でも賃金上昇が続くと予想されます。

なお、今回最も賃金の上昇率が高い結果となったのはホテルと不動産サービス部門で 8.0%でした。

次に上昇率が高かったのは金融サービスで、7.6%でした。

しかし、これらはいずれも前年の伸び率を下回りました。

その他、製造は 4.0%、卸売りは 4.1%、建設は 4.2%、といずれもサプライチェーンの影響を受けた関係で低調な伸び率でした。


職階別の伸び率はいずれも前年の水準を下回る結果となり、以下の通りでした:

若手管理職:6.3%
一般従業員:4.8%
上級管理職:4.6%

賃金の伸びの緩やかさは上級管理職で最も顕著であり、今後より公平な賃金調整が行われるようになる展望が垣間見られる結果となりました。


4. フレックス賃金制度(FWS)の導入状況

本レポートでは、厳しい経済状況や突然のビジネス変化に対応するため、毎月の賃金に月次変動手当(MVC)と年次変動手当(AVC)といった可変部分を持たせるフレックス賃金制度の導入状況についても発表されました。

現在何らかの形でFWSを導入していると答えた企業は全体の80.4%で大多数を占めたものの、完全に導入している企業の割合は10.3%と依然として低いことが分かりました。

政府は、FWSが業績に基づいて賃金を調整する柔軟性を提供するものとして、企業が賃金上昇を持続的に管理する上で重要な役割を果たすとし、導入を推奨しています。

FWSについては詳しくはこちらをご参照ください。


5. 今後の見通し

MOMは、今年から来年にかけて雇用市場は引き続き逼迫しており、特に情報通信、金融サービス、専門サービス、医療・福祉サービスなどの分野でPMET労働者の需要が高いとしながら、これらのセクターでは賃金が上昇する可能性があると見ています。

一方で、インフレが引き続き緩やかになるにつれて実質賃金上昇率は改善する可能性があるものの、不透明な経済環境から企業は賃上げに慎重な姿勢だという見方を示し、2024年の名目賃金上昇率は2023年並みと予想しています。

本結果を受けて全国賃金審議会(National Wage Council)は、来月8月に生産性向上と連動した持続可能な賃上げに焦点を当てたガイダンスを発表する予定だとしています。


6. 最後に

今回は、先日MOMが発表した賃金動向に関するレポートについて詳しくお届けしました。

上昇率は鈍化したものの、引き続き全ての業種で緩やかな賃金の上昇が見られたことで、シンガポールの堅調な労働市場の維持が垣間見られる結果となりました。

一方で、今後の展望については慎重な姿勢を示す企業も多いことから、状況が変わる可能性も充分に考えられるでしょう。

弊社としましても、今年、来年に向けての動向も引き続き注視していきたいと思います。

今回のレポートについて、より詳しくはMOMのウェブサイトに掲載されている「賃金慣行に関する報告書2023」をご参照くださいませ。

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