こんにちは！　リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。

多様なバックグラウンドをもつ人々の集まるシンガポール。

シンガポール国民の大半を占める中華系人種に比べると数としては少ないものの、マレー系国民を中心に、インドネシアやバングラデシュ、パキスタンから来た方々などイスラム教徒も多く暮らしています。

そのイスラム教徒の人々(ムスリム)が、今年は3月11日より断食期間(ラマダン・Ramadan)に入っています。

日の出から日没まで一切の飲食を控える断食は、いくら伝統的習慣とはいえ彼/彼女たちにとって過酷なもの。

では私を含め、そうした習慣がない人たちはこの期間中、どう接したらいいのでしょうか？

今回は、ラマダンについてと、断食中の友人・同僚たちにすると喜ばれること・しないほうがいいこと、というテーマでお届けします。

【目次】
1.ムスリムにとって大事なラマダンとは？
2.断食中のムスリムにはどう接する？
3.シンガポールで、断食明けのお祭り気分を味わおう！
4.最後に

 

1. ムスリムにとって大事なラマダンとは？

イスラム教徒にとって断食(サウム・Sawm)は、五行と呼ばれる義務のひとつ。

魂を清め、自身の欲を抑制して信仰心を深めることを目的に、イスラム暦の9月にあたるラマダンの月に行われます。

また空腹を味わうことで、死者や世の恵まれない人々に想いを馳せ、共感や感謝の心をもつとも説かれています。
 

このラマダンですが新暦にすると年によって日が変わり、今年2024年は3月11日～4月9日となっています。

ちなみに日付はサウジアラビアを基準にしているため、シンガポールでは実際は3月12日の断食開始となりました。

断食は29～30日のあいだ続き、今年は4月9日が最終日と定められています。
 

日の出から日没までの間は、食べ物から水まで一切の飲食を断ち、日没を待って食事を摂ります。

そして日の出までに一日分の食事を済ませて、また断食に臨む…1ヶ月間はその繰り返しです。
 

信仰心を深めるためのラマダンでは日中の食事だけでなく、諍いや悪口や噂話、喫煙なども禁じられています。

一方で病人や旅行者、高齢者、妊婦、授乳中や月経期の女性、子どもは断食対象外と決まっているそうです。
 

太陽の動きに連動して断食するので、1ヶ月間を通しても断食時間は僅かに変化します。

シンガポールは13時間35分前後ですが、国によっても変わるため、グリーンランドでは世界で最も長い断食時間(17時間52分！)を耐え忍び、逆にニュージーランドは短め(12時間42分)なのだとか。
 

▼【参考】ラマダン2024シンガポールの断食開始・終了時刻カレンダー

 

2.断食中の友人・同僚にはどう接する？

断食と聞いてその大変さは想像できても、具体的にどう接すればいいのか、いまいち分かり辛いもの。

そこで弊社のムスリム社員から、断食期間中に、周りがしてくれたら嬉しいことと、控えてほしいことをズバリ聞いてみました！

■すると喜ばれること

・ムスリムの同僚・友人の前での飲食はOK！ただ相手を尊重するためにも、食べ始める前に一言聞いておくと喜ばれます

・”Ramadan Mubarak”(Blessed Ramadan)や”Selamat Berpuasa”(Happy Fasting)の言葉をかけてあげましょう！この言葉に大いに励まされるそうです

・職場では、ムスリムにランチタイムの必要はありません。そのぶん早く帰宅させてあげるとベターです。断食明けの夕食の準備もできて喜ぶはず！

・ラマダンやムスリムについての質問は歓迎！興味をもってもらえることはとても嬉しいようです(もちろんリスペクトの気持ちは忘れずに)

・一日5回のお祈りは、いつも以上に神聖な気持ちで臨んでいます。ぜひ静謐で平和な時間・空間を過ごさせてあげてください

 

■やめたほうがいいこと

・空腹で弱ったりイライラしているように見えても、「断食をやめれば？」といった発言はNG行為。相手の行いを尊重する気持ちを忘れずに

・ラマダン中は否定的な会話、例えば悪口や噂話、辛辣な言葉などは控えましょう

・喫煙者は、ラマダン中に断食している人々の目の前での喫煙はやめておきましょう

・1ヶ月の断食明けのハリラヤ前後で休暇を取るムスリム社員が多数。したがって前後に急を要する案件などの持ちかけは控えた方が無難です

総じて言えるのは、ラマダン中、断食に臨む人々は神聖な存在であること。

リスペクトを忘れずに接することを心がけましょう。

 

3.シンガポールで、断食明けのお祭り気分を味わおう！

一日の断食明けの食事であるイフタ―ル(Iftar)は通常の食事以上のごちそうの場となります。

家族や親族、友人たちと大勢で集まり、空腹後の食事を共にする場を想像しただけで高揚感がこみ上げますよね！

この期間だけ並ぶ食材・料理もあり、シンガポールでも日没後、街はいつも以上に活気づいています。

断食期間中のライトアップで有名な場所と言えば、ゲイラン・セライ(Geylang Serai)！

MRT・EW線のPaya Lebar駅とEunos駅間にあるSims AvenueとChangi Road沿いは、日没後の華やかなライトアップに加え、およそ500もの屋台が立ち並び、お祭り気分に浸れること間違いなしです。
 

そして1ヶ月の断食明けを祝うハリラヤ(Hari Raya Aidilfitri。Hari Raya Puasaとも言う)は、幸福感も頂点に達しお祝いムード一色となります！

今年は4月10日がこのハリラヤ当日。

日本人にとってのお正月のような、年間を通しても最大のイベントです(ただムスリムにとっても新年というわけではありません)。

断食を終えた人々には「Selamat Hari Raya」(Happy Hari Raya)の言葉をかけて労いましょう。

4.最後に

以前、息子の友人であるエジプト出身の子が「今年初めて断食をするんだ！」と話してくれたことがあります。

当時その子は10歳。

「こんなに幼い頃から？」と内心驚いた私ですが、その子はその話をとても誇らしげにしてくれました。

彼の様子を見て、ムスリムにとって断食を始めるということは、宗教コミュニティの一員として認められる、大人の一歩のようなものなのだと理解しました。
 

自身の欲をコントロールし、弱者に想いを寄せるラマダン。

その目的は宗教の枠組みを超えて、私たちにも大事なものだと気づかされました。

長く苦しい断食に挑む同僚・友人に、敬意をもって接していきたいですね。

 

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