【2024年第4四半期】改定値 シンガポール労働市場統計

こんにちは。

リーラコーエン シンガポールマーケティング担当の野上です。

先日3月19日、シンガポール人材開発省(以降MOM)は2024年第4四半期の労働市場統計における改定値を発表しました。

前回1月に発表した統計によると、同四半期の雇用増加人数は12,900人の着地見込みでしたが、今回の改定値では11,900人と下方修正がありました。


今後はインフレの鈍化や不確実性の高い社会・経済情勢による影響に懸念が残るものの、足元の2025年第1四半期は引き続き労働市場は拡大すると締めくくられた本レポート。

今回のブログでは、実際に詳しい数値や2024年の労働市場における振り返り結果を詳しく見ていきたいと思います。

【目次】
1.2024年第4四半期改定値 雇用増加ペースは鈍化
2.2024年振り返り 
3.求人件数と解雇者数振り返り
4.失業率振り返り
5.今後の展望
6.最後に


1.2024年第4四半期改定値 雇用増加ペースは鈍化

2024年第4四半期の総雇用人数は、前回の速報値からの下方修正を経て全体で7,700人の増加でした。

その内訳は、シンガポール人・永住者(居住者)が1,400人、非居住者は6,300人で、その増加ペースは第3四半期と比べると増加ペースは大きく鈍化しています。

背景には居住者の雇用が専門サービスや金融サービスの分野で引き続き堅調に伸びている一方で、建設業や製造業のワークパーミット保持者の雇用増が減少したことによる非居住者の雇用が、前四半期と比べて大幅にペースが落ちていることが挙げられます。


2.2024年振り返り 

2024年全体で振り返ってみます。

主要なポイントを見ていきましょう。

項目 2024年 前年比
総雇用者数 +44,500人 ▲34,300
住民雇用者数 +8,800人 +4,200
非住民雇用者数 +35,700人 ▲47,800
求人件数(2024年12月時点) 77,500件 +16,000
失業率 1.9%  
解雇者数 3,680人 630
解雇後6ヶ月以内の再就職率 58.1% マイナス2.3ポイント

(出典:MOM Labor Market Research)

昨年1年間での総雇用者数は44,500人増で、2023年の78,800人増と比べるとその伸びは鈍化しました。

居住者・非居住者ともに雇用人数は増加しましたが、それぞれの内訳は異なります。


まず、居住者の雇用は8,800人増となり、2023年の4,600人減から回復しました。

居住者雇用の増加が顕著な業界は以下の通りでした。

業界 雇用人数の増加
金融・保険 +5,300人
医療・福祉 +5,200人

専門サービス(コンサルティングなど)

+5,000人
情報通信 +4,200人

(出典:MOM Labor Market Research)

一方で、非居住者の雇用は35,700人増となり、2023年の83,500人増と比べると伸びが大きく減速しています。

この増加の大部分は、労働許可証(Work Permit)保持者によるものでした。


EPやSパス保持者数は、過去2年間の大幅な増加を経て今年はほぼ横ばいとなりました。

これは、COMPASS制度や最低給与要件の引き上げに適応していることが影響していると考えられます。


3.求人件数と解雇者数振り返り

2024年12月の求人件数は77,500件となり、9月の61,500件から回復しました。

また、求人倍率(求人数/失業者数)は、2024年9月に1.32を記録後に12月に1.64まで改善しています。

これは未だ2023年12月の1.76を下回る水準ですが、改善の兆しが見えた結果となりました。


なお、2024年第4四半期の解雇者数は3,680人となり、第3四半期の3,050人から増加する結果となりました。

特に金融・保険業界では、コスト増を理由に解雇を実施する企業が増え、解雇人数は270人から620人へと大幅に増加しました。


一方で、2024年通年での解雇者数を見ると13,020人で、2023年の14,590人より減少しています。

レポートで、MOMは「2024年の企業や経済全体の好調な見通しを反映した結果」だとしています。


4.失業率振り返り

2024年12月時点での失業率は1.9%(居住者2.8%、市民2.9%)と引き続き低水準で、年間を通して双方とも低水準を記録しました。

その一方で、解雇後6ヶ月以内の再就職率は58.1%と前年と比較すると若干低下しました。

これは、求職者がスキルアップに時間をかけたり、より良い条件の仕事を探していると推測されており、今後改善方向に向かうことが予想されています。


5.今後の展望

シンガポール経済は2025年に1.0%から3.0%の成長が見込まれており、2024年の4.4%に比べて鈍化する見通しです。

これは、世界的な貿易摩擦の継続や、インフレ鈍化プロセスの停滞による影響を受けるためです。ただし、製造業や外需依存型のサービス業の拡大が引き続き成長を下支えすると予測されています。

また、同省が行った調査で2025年第1四半期に採用を予定している企業は全体の46.3%となり2024年第3四半期の43.2%から増加していることや、賃上げを予定している企業が31.6%と前年の15.6%から大幅に増加していることも明らかになっています。

景気の不確実性は依然として残るものの、多くの企業が採用や給与引き上げに積極的な姿勢を示しており、特に成長が見込まれる分野では、より積極的な採用が進むことが期待されています。


これらを踏まえ、MOMは同レポートで、2025年の労働市場は慎重ながらも前向きな動きが見られるとしています。


6. 最後に

今回は、先日MOMが公開した労働市場統計の改定値および2024年のまとめについて詳しくお届けしました。

シンガポールでの事業計画を立てる上でも大きな参考情報となる労働市場調査結果。ますます今後の動向が注目されています。

今回のレポートについてより詳しくお知りになりたい方はぜひMOMのホームページをご参照くださいませ。

引き続き続報がリリースされ次第、本ブログでアップデートしてまいります。

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