こんにちは。

リーラコーエン シンガポールマーケティング担当の野上です。

先週8月18日夜、ローレンス・ウォン首相はアンモキオ地区にある技術教育研究所(ITE)の講堂にて施政方針演説(ナショナルデー・ラリー)を行いました。

年に何度か行われる首相演説の中でも、ナショナルデー後に行われる演説は特に多くの国民の注目を集める大切なイベントの1つです。

今年は、不確実性の高い将来について指摘しつつ、国民がより良い生活を享受できる国作りを目指すとしながら、経済、家族、住宅、教育の4つの柱について英語、中国語、マレー語の３カ国語を用いて説明しました。

今回は、本演説の内容の要点をお届けいたします。

【目次】
1.経済力強化策
2.人材育成の促進
3.育児休暇と家庭支援策の拡充
4.公営住宅支援計画の発表
5.教育制度の改変
6.最後に

1.経済力強化策

ウォン首相は、経済について「競争力を維持し、イノベーションと生産性の向上を推し進めるため、私たちはさらに努力しなければならない」とした上で、今後の経済発展を見据え、特に零細・中小企業の企業活動をサポートするための企業の各種規制を緩和する意向を示しました。

今回の規制緩和に伴うトレードオフ(二律背反)の見直しについては、ガン・キムヨン副首相を指名し、今後も数年に一度は既存の規制を積極的に見直していくと説明しました。

演説では、例としてドローンショーにおけるコンプライアンスコストの削減や、ビジネス申請に必要な時間の短縮などが挙げられていました。

2.人材育成の促進

次に、ウォン首相はシンガポール国民の競争力を向上させるために2025年に40歳以上の国民を対象とした「Skills Future Level Up Program (スキルズ・フューチャー・レベルアップ・プログラム)」を導入する計画を発表しました。

このプログラムでは、40歳以上のシンガポール人は4,000シンガポールドル(約45万円)のSkillsFutureクレジットの上乗せを受けることができます。

また、フルタイムで研修を受ける国民に対し、1カ月あたり最大3,000シンガポールドル(約34万円)の研修費を政府が負担します。

助成期間は最長2年間で、総額の上限は72,000シンガポールドルとなります。

また、パートタイムで働きながら研修を受ける人にも助成金が支給されます。

本計画の詳細は、近日MOE(教育省)から発表されるそうです。

さらに、低中所得層の失業者を支援するための施策「SkillsFuture Job Seeker(スキルズ・フューチャー・ジョブ・シーカー)」も導入予定だとしました。

このプログラムでは、最大6カ月間にわたり6,000シンガポールドルを上限に助成を行い、個人におけるスキルアップ研修やキャリア形成のためのアドバイスをはじめ、ジョブマッチングサービスなどを提供するものだそうです。

本支援策の詳細は2025年前半にMOM(人材開発省)より発表される見通しです。

ウォン首相は、「私たちが勉強するのは、試験のためでも、資格のためでもない。自分のスキルを向上させるためであり、より良い結果を出し続けるためであり、スキルを習得するための学習と達成のプロセスは生涯継続しなければならない」と演説した上で、引き続き政府が推進するキャリアアップのための支援策「SkillsFuture」プラットフォームを活用していくとしました。

3.育児休暇と家庭支援策の拡充

「結婚して子どもを持つ、という多くのシンガポール人の願望に対し、政府ができることはもっと家族に優しい環境を作ることだ」と説明した上で、これまで2週間だった父親の育児休暇を2025年4月より4週間に延長し、取得を義務化することを発表しました。

さらに、父親・母親間で共有できる10週間の育児休暇を新たに導入する意向を示し、「今後子どもの両親は仕事と家庭の責任をより柔軟に両立できるようにする」としました。

また、子どもが3人以上いる家庭への支援の強化も発表しました。

シンガポールで家族を養育するための支援環境を整えるための幅広い取り組みの一環として、詳細は今後発表される見通しです。

4.公営住宅支援計画の発表

シンガポール国民の単身者が両親と同居または近居するために住居を購入する場合、来年2025年の半ばよりBTO(Build to Order)公営住宅を優先的に購入・入居できるようにする意向を示しました。

現在、この優先権を享受できるのは、結婚している夫婦およびその子どものみとなっています。

また、ウォン首相は低所得世帯における最初の住宅取得を支援する計画も推進していくと説明しました。

政府は、特に若い夫婦や低所得者層の住宅購入に関する懸念にも引き続き取り組んでいく姿勢を示しています。

住宅を手頃な価格に維持するため、BTO(Build-To-Order)公営住宅の供給を拡大したり、低所得者層に対するCPF住宅補助金を増額したりするなどの措置を引き続き講じる方針です。

5.教育制度の改変

ウォン首相は、これまで小学校で導入されていた英才教育スキーム「ギフテッド・エデュケーション・プログラム(GEP)」を大きく改革することにも触れました。

今後は、すべての小学校でより高い能力を持つ生徒への支援を拡大するとし、多様な才能を育成し、該当生徒へ複数の進路を提供することを目的とした教育制度の見直しを図ることを発表しました。

6.最後に

今回は、先日8月18日に行われたナショナルデー施政方針演説の詳細をお届けしました。

今年20年ぶりに首相が交代し、ローレンス・ウォン首相となってから初めてのナショナルデーを迎えたシンガポール。

来年2025年には独立60周年を迎えます。

演説は、また1年無事に歴史を刻むその日まで、国民の幸せを見据え着実に歩んでいく決意表明のように感じられました。

在星日本人として、新たな歴史の1ページを見届けられたことを嬉しく思います。

本記事をお読みの皆様にとっても、引き続き良きシンガポール生活が送れますよう、ご参考になれば幸いです。

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