シンガポール国外でキャリアアップ 政府が支援する「海外派遣プログラム」

こんにちは! リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。

先の11月、人材開発省(MOM)のタン大臣が、シンガポール人が海外で研修を受けられるプログラム「Overseas Markets Immersion Programme」の開始を宣言しました。

前々から詳細の発表が待たれていた画期的な研修制度。今回明らかになった中身についてお伝えしてまいります。


【目次】
1. 海外派遣プログラム(OMIP)の概要と狙い
2. OMIP参加条件
3. プログラム例と、指摘されるOMIPへの懸念 
最後に

 

1. 海外派遣プログラム(OMIP)の概要と狙い

シンガポールで働く人々に海外経験を積んでもらうための海外派遣プログラム「Overseas Markets Immersion Programme」、略してOMIPの内容が今回発表されました。

MOMと、MOM傘下の委員会組織ワークフォース・シンガポール(WSG)によって運用される同プログラムへの投資額は約1,600万シンガポールドル/SGD(約18億円)にのぼり、2年間で最大250人の在シンガポール従業員の海外派遣を予定しています。

このプログラムの主な狙いは
・シンガポール企業の国際競争力の維持・向上
・シンガポール従業員の国際ビジネス経験やスキルアップの機会提供、人材教育
です。

このプログラムによって従業員を派遣する参加企業は、派遣された従業員の給与の70%と、海外勤務手当の70%の金額を、最長9ヶ月もの間、政府から援助されます(それぞれ5,000SGDと3,000SGDの上限あり)。

これによって企業は対象者1人につき最大72,000SGDの補助が受けられる仕組みとなっています。

一方で企業は、海外に派遣される個人に対して4,000SGD以上の固定月給を支給することが義務付けられています。

 

また、同プログラムのパートナーであるシンガポール・ビジネス連盟(SBF)が、参加企業と協力して研修計画を策定。抑えるべき定量的な評価・指標や、研修終了からその後24ヶ月間の参加者の昇進・昇格についてのレポートやキャリア開発計画の提出も求められます。

 

海外研修で得るスキル / 経験する職種には、下記の領域が主に想定されています。
・事業開発
・営業 / マーケティング
・カスタマーサービス
・プロジェクトマネジメント
・オペレーション
・財務経理 / 人事
・国際関係 / 法務・監査

ターゲットとなるのはこういった職務領域であることに加えて、PMETs(Professionals, Managers, Executives and Technicians)という、事業の核となることが期待されたポジションにいる方々です。

 

2. OMIP参加条件

OMIPに参加するには、企業とその従業員の両者が下記の条件を満たしている必要があります。

【参加企業の条件】
・シンガポールで登記または法人化されている企業
・研修後に達成すべき短期KPIの定量化、研修終了後24ヶ月間のキャリアアップを概説した詳細なキャリア開発計画を提出すること
・海外赴任者に最低4,000SGDのの固定月給を支給すること


【参加する個人(従業員)の条件】

同プログラムの参加には、大前提としてクリアするべき条件があります。

・シンガポール国民またはシンガポール永住権(PR)保持者で、21歳以上
・国家公務員を修了、または研修開始の少なくとも2年前に教育機関を卒業している方
・派遣元企業またはその関連会社の株主やオーナーでなく、また会社のオーナーと親族関係にない方
・現在、他のWSG助成プログラムや過去OMIPに参加していない方

上記条件を満たした上で、個人状況によって以下が加えられます。

■新入社員の場合
・フルタイム正社員 / 契約社員で、月給4,000SGD以上の固定給を得ていること
・所属業界での職務経験が少ない、または全くないこと
 

■既存の従業員の場合
・応募時点で1年以上、参加企業に雇用されていること
・フルタイム正社員または契約社員で、月給4,000SGD以上の固定給を得ていること
・研修後に達成すべき短期KPIを定量化し、24ヶ月間でのキャリアアップの概略を示したキャリア開発計画があること

これらの条件を満たし承認されると、プログラムに参加できます。

研修は6~9ヶ月間の海外での就労以外に、OJT研修、座学講義も含まれます。

 

3. プログラム例と、指摘されるOMIPへの懸念 

企業・個人にとって魅力的であるOMIP、その実行は既に始まっています。

例えば、ソフトローンチのパートナーとして選ばれた、シンガポール地場のベーカリー企業であるブレッドトーク(BreadTalk)社が良い例です。

14の国で660以上の店舗を展開するブレッドトーク社は、エグゼクティブ・オフィスのマネージャーであるヘン氏を、2024年10月よりイギリスに派遣しています。

彼女は現在、子会社である中華レストランチェーン鼎泰豐 (ディンタイフォン) ロンドン支部にて6ヶ月の間、シンガポールで期待されるサービス・スタンダードをロンドンでも展開するための研修に入っているのだとか。

また、シンガポールと同じデジタル在庫管理システムを現地にも導入することで、イギリスでのサプライチェーンの確立、在庫・価格戦略の最適化にも取り組んでいます。

 

ただ、開始に至っては不安点も指摘されています。

企業側からは費用の問題や、海外駐在後に当該従業員が離職してしまうことを懸念する声が挙がっています。

また、個人側では、個々の家庭の事情でプログラムへの参加が難しい、派遣先での異文化や生活環境に適応できるかといった不安や、実際に研修で学んだことが自身のキャリアアップに役立つのかといった懐疑的な意見があるようです。

ただ、そういった懸念はあったとしても、それ以上にシンガポールにもたらす良い影響の効果が大きいと政府は睨んでいます。

建国以来、人に投資し続けてきたシンガポールの姿勢をここからも感じ取ることができます。

 

最後に

今回は、シンガポールで新たに始まる人材育成の取り組みのひとつである、Overseas Markets Immersion Programme(OMIP)についてお伝えしました。

日本人読者の方々には関連性が薄いかもしれませんが、シンガポールに法人登記している企業、また永住権(PR)保持者であれば、この研修への参加対象になりえます。

また、こういった制度を通じて、人材育成や教育支援に多くの資源を投じるシンガポールの国としてのスタンスが垣間見えます。

この制度の成果が花開くのは数年先のことかとは思いますが、こういった地道な種まきがあることを頭の片隅に置いていただければ幸いです。

 

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