【注目人物】メガバンクDBS銀行 CEOグプタ氏の功績に学ぶ


こんにちは! リーラコーエン シンガポール リサーチャーのShihoです。

シンガポールのメガバンクと聞いて、まずDBS銀行を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。

当のDBS銀行に2009年にCEOとして入行して以来、様々な改革を進めてきたグプタ氏 (Piyush Gupta)が来年2025年3月に退任されます。

15年の歳月にわたって彼がとってきた革新的な施策やリーダーシップは、今日DBS銀行を「世界最高の銀行」たらしめています。

今回はグプタ氏の軌跡と共に、彼のリーダーシップから何を学べるか、という観点でお伝えしてまいります。


【目次】
1. DBS銀行についておさらい
2. CEOグプタ氏の歩み
3. グプタ氏のリーダーシップから学ぶ10の教訓
4. 退任、そしてタン氏へバトン
5. 最後に

 

1. DBS銀行についておさらい

若き国家シンガポールの発展のために1968年に設立されたDBS銀行

元々はThe Development Bank of Singaporeという名称で、名の通りシンガポール開発銀行として知られていました(現在はDBS Bank Limitedで統一)。

一般銀行業務、トレジャリー、証券仲介、株式・債券の資金調達の分野において圧倒的な地位を占めており、シンガポール以外の地域 (中国、香港、台湾、インドネシアなど)にも進出しています。

今日「世界最高の銀行」として名高く、数多くの世界的な格付けへのランクインや栄えある賞の受賞などがそれを裏付けています。

企業格付けの権威・スタンダード&プアーズと信用格付け機関であるムーディーズからアジア太平洋地域で最高レベルの「AA-」と「Aa1」を獲得しており、グローバル・ファイナンス社からは「アジアで最も安全な銀行」の称号を2009年から2023年まで15年連続で贈られています。

また、2019年7月には、金融界において最も権威のある3つのグローバル・ベスト・バンク賞を同時に贈られ、これら3つを保持する世界初の銀行となっています。

 

2. CEOグプタ氏の歩み

DBS銀行を「世界最高の銀行」にのし上げた立役者は、2009年CEOに就任したグプタ氏 (Piyush Gupta)に他なりません。

1960年、インド北部の町に生まれたグプタ氏は、現在64歳。

2013年のニューヨーク・タイムズ紙によるインタビューから知るに、1982年、インドのコルカタにあるシティバンクのオフィスでキャリアをスタート。

最初はバックオフィスの事務スタッフマネージャーとしての仕事でした。そこから順調に出世を重ね、2000年にシティバンク・インドネシアのCEOに就くまでになりました。

ほぼ同時期に、自身で「Go4i.com」というベンチャー企業を設立するも、ドットコムバブルの崩壊で倒産の憂き目に。

2001年にはシティバンクに戻り、東南アジア・太平洋地域のCEOとして、金融市場、投資銀行、資産運用など、同社の東南アジア・太平洋地域における全事業の責任者を務めました。
 

そして2009年、DBS銀行のCEOに就任。

DBS銀行は当時の声明で、グプタ氏を「ビジネスが好調な時も困難な時も事業運営をこれまで成功させており、アジアにおける経験豊富な手腕の持ち主である」と評しています。
 

DBS銀行CEOとして就任以降のグプタ氏の働きは目覚ましいもので、旧来の銀行スタイルからの革新、またデジタル変革を鮮やかに指揮したと言われています。

例えば今日では馴染みのあるデジタル決済、オンラインバンキングといった金融サービスも、彼が先駆けて導入したものです。

2013年にグプタ氏は、DBS銀行の競合は他の金融機関ではなく、巨大テック企業だと語っています。「我々の基準はアマゾンやアリババでなければなりません。そのため他の銀行が何をするかについて考えることをやめ、巨大テック企業が何をするのかを考えるようになりました」
 

グプタ氏自身も、長年のリーダーシップの発揮によって数多くの賞を受賞しています。

経営学誌『ハーバード・ビジネス・レビュー』によると、2019年に世界で最も優れた業績を挙げた最高経営責任者トップ100の1人として、また2021年には経済紙『エコノミック・タイムズ』からグローバル・インディアン・オブ・ザ・イヤーに選出されています。

 

3. グプタ氏のリーダーシップから学ぶ10の教訓

グプタ氏CEO就任前のDBS銀行に対する世間の評価は、決して今ほど高くはありませんでした。

就任して間もない2010年、同行はシンガポール通貨庁​(MAS)から、7時間にわたるシステム全体の停止について警告を受けています。

同年7月にはすべての銀行サービスや取引が停止したこともあります。

そのような状態だった企業を在任15年のあいだで「世界最高の銀行」にのし上げた同氏のリーダーシップはどのようなものだったか、10のキーワードと共にお伝えしてまいります。

 

1)  デジタル変革の受け入れ:
 グプタ氏は、銀行の未来がデジタル技術にあることを早くから認識していました。

大手テック企業を競合企業として照準をシフトさせることで、DBS銀行をデジタルバンキングのリーダー的存在へと導きました。

2014年にサービスを開始したデジタルウォレット「PayLah!」は、現在では200 万人超のユーザーを抱えるまでに成長しており、まさにこのビジョンが具現化されたものと言えるでしょう。

 

2) 適応力と柔軟性:
 シティバンクからDBS銀行にジョインした経歴の持ち主であり、さまざまな企業文化や環境で成功する適応力と能力を身に着けています。

この柔軟性は、急速に変化する今日のビジネス環境を切り抜けるのに重要です。

 

3) 長期目標への集中:
 短期的な利益よりも長期的な戦略目標を重視したことが、DBS銀行の成功の礎となっています。

アジアを世界の市場と見なす同氏の信念と、同地域への戦略的投資が、この前向きなアプローチを反映しています。

 

4) 回復力と、不屈のマインド:
 グプタ氏はキャリアの中で、ドットコムバブルの崩壊やDBS銀行のデジタル崩壊危機などの課題に直面しても、何度も回復力を見せてきています。

挫折から立ち直り、危機を乗り越えてメガバンクを率いた彼の能力は、リーダーシップにおける精神的な強さの重要性を表しています。

 

5) 人材への投資:
 グプタ氏はこれまで、強力で有能なチームの構築に尽力してきました。

従業員の才能を認め、さまざまな組織変革を行い、デジタルバンカーとしての従業員の再育成などに多額の投資をしてきました。

 

6) 倫理観におけるリーダーシップ:
 シンガポールの「AIとデータの倫理的使用に関する諮問委員会」の一員でもある同氏は、銀行業界全体の倫理的な慣行を啓発・推進してきました。

これは顧客や利害関係者との信頼関係の構築に役立っています。

 

7) グローバルな視点:
 DBS銀行のような多国籍組織を率いる上で不可欠なグローバル視点を、豊富な国際ビジネス経験によって培ってきました。

グローバル市場に対する彼の洞察は、DBS銀行のアジア全域での拡大と成功を促進してきました。

 

8) 危機管理におけるイノベーション:
 世界金融危機とデジタル危機の折には、危機管理に対する革新的なアプローチをとることでDBS銀行の安定と成長に寄与してきました。

激動の時代を切り抜けた彼の辣腕は、企業にとっての効果的な危機管理の手本のようです。

 

9) 持続可能性への取り組み:
 「持続可能な開発のための世界経済人会議」副会長として、DBS銀行の中核戦略にも持続可能性を組み入れました。

持続可能な慣行への取り組みにより、DBS銀行は金融界における責任あるリーダーとしての地位を確立しています。

 

10) 継続的な学習と成長:
 グプタ氏のキャリアにおける成功を支えたのは、継続的な学習と成長への探求です。

彼のキャリア初期であるシティバンクでの成長、またDBS銀行での変革的な仕事を通じて、常に新しい課題と発展の機会を求めてきたと言えます。


4. 退任、そしてタン氏へバトン



2025年3月でのCEO退任を表明しているグプタ氏。

かねてより65歳でのリタイアを標ぼうしてきました。


次のCEOとして選ばれたのが、現在同行の副CEOを務めるタン氏 (Tan Su Shan)です。

同行初の女性CEOとなります。

シンガポールは、アジア地域では男女不平等数値が最も低い国とされていますが、それでもシンガポール銀行業界における女性のキャリアという観点からはまだ珍しいことです。
 

タン氏はDBS銀行の機関投資家向け銀行部門を率いており、DBS入行前はモルガン・スタンレーとシティバンクでシニアマネジメントを務めていました。

彼女のこれまでの功績として主なものは、DBS銀行の富裕層向け資産運用部門と消費者銀行部門の収益性を大幅に改善し、デジタル戦略を統合したことにより、現在は消費者向けおよび富裕層向け資産運用および機関銀行業務がDBS銀行の収益の90%を占めていることがあります。

今後もDBS銀行の収益性と成長を維持していくには、前例のないスピードで進化するビジネス環境を上手く操縦していく必要があり、新CEOの活躍が期待されます。


5. 最後に

DBS銀行におけるピユシュ・グプタ氏のリーダーシップは、まさに変革をもたらすものでした。

彼の戦略的ビジョン、イノベーションへの取り組み、倫理的なアプローチは、DBS銀行を新たな高みへと押し上げただけでなく、さまざまな業界のリーダーにとってのベンチマークにもなりました。

後任のタン・スー・シャン氏にバトンを渡す準備を進める中、グプタ氏の遺した功績は、次世代のリーダーたちにインスピレーションを与え、導き続けることでしょう。

 

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